購入すれば100万200万円と高額な初期費用が発生する太陽光発電システムの導入。「無料設置」とはどのような仕組みなのか、カラクリを解説します。

無料設置業者の収益源を見てみよう

「無料設置」のビジネスモデルを解剖します。

売電収入

日本では「固定価格買取制度」によって、家庭用を含む太陽光発電の余剰電力は一定期間、一定の金額で買い取りが行われます。例えば2020年度は1kWhあたり21円です。10年にわたり、余剰電力の買い取りが義務付けられています。

無料設置で設置された太陽光発電システムによって生じる余剰電力は、設置業者に帰属します。設置業者は余剰電力から得られる売電収入から設置費用を回収・利益を確保します。

発電量は地域によって異なりますが、平均的な4.5kWの発電システムで年間4500kWh程度を発電できます。その内、自家消費(設置された建物で消費される分)が30%程度とされているので、年間3150kWhで66000円の収入を設置業者が得られる計算です。

電力の販売

「無料設置」を導入するにあたって、電気の供給を無料設置業者が提供する料金メニューに変更する必要があります。太陽光発電を導入しても家庭で使う電力のすべてを賄うことは出来ません。電気を買ってもらうことで無料設置業者が収益を確保します。

なお、提供されている料金メニューは大手電力会社の標準メニューよりも安くなる料金設定となっていることが多いため、利用者にとって必ずしも不利益となるわけではありません。

また、購入して設置する太陽光発電では発電した電力を自宅で使用する「自家消費」の分は電気代がタダになります。一方無料設置の場合は、自家消費分にも電気代が発生するため事業者がその部分でも収益を得ることが可能です。

自家消費分に課金する場合、価格は27円/kWh程度となり実は余剰電力の買取価格(19円/kWh)よりも高値なので事業者にとって小さくない収益源となります。しかも、「託送料金」などの原価が掛からないため利益率も高いです。

契約期間満了後のメンテナンス

無料設置によって設置された太陽光発電システムは、契約期間中は設置業者の責任においてメンテナンスが行われます。

契約期間満了後は所有権が利用者側に移り、後は自由に利用することが出来ます。契約期間は概ね10年程度ですが、発電システム自体は30年以上利用することが出来るため、長期的に継続してメンテナンスが必要となります。

例えば太陽光発電に必要な「パワーコンディショナー」は寿命が15年程度とされているため、契約期間満了後に少なくとも1度は更新が発生します。無料設置業者は顧客と接点を持っているため、そうした機器の更新やメンテナンスの受注を得やすく、収益を得られる可能性があります(契約期間満了後は完全に自由なので、必ずしも設置業者にメンテナンスを依頼する必要はありませんが)

パワーコンディショナー

また、電気の供給も継続して実施出来る可能性があり、その部分でも収益化を期待できます。契約期間が満了したユーザー向けのお得な料金プランを案内するなどして繋ぎ止めを行います。

「計算が合わない」理由は

業者が得られる収益を合算すると・・

売電収入と電力の供給によって得られる収益から大まかな利益を計算すると、以下のようになります(発電容量4.4kWでのイメージ)

  • 売電収入 66000円×10年=66万円
  • 電気の供給 年10万円×10年×粗利益3%=3万円

合算すると概ね70万円程度となります。

一方、同程度の太陽光発電システムを購入すると、100万円を超えることは珍しくありませんし150万円を超える場合もあります。どう考えても計算が合わないと言えます。

太陽光発電は業者による価格差が1.5倍

2016年に経産省の太陽光発電競争力強化研究会が行った調査によると、同じメーカーの太陽光発電システムでも購入する代理店業者によって価格差が1.5倍生じていると結論付けられています。例えば業者Aから100万円で買えるパネルが、業者Bでは150万円で売られているという話です。

無料設置を利用せず、太陽光発電システムを購入する場合も必ず一括見積りサイトを利用して価格をよく比較することをおすすめします。

無料設置業者は自社の利益を最大化するため、安い発電システムを調達して利用者に提供します(利用者は製品を選ぶことは出来ない) 大量に調達して提供しており購買力もあることから、一般的な「小売価格」よりも大幅な安値で調達することが出来ているとみられます。メーカーが無料設置サービスを提供している場合もあり、その場合はコストは市販価格よりも大幅に安いことは間違いありません。

あまり大きな声では言えませんが、「無料設置」は契約期間中に中途解約すると違約金が発生して「買い取り」という形になります。この違約金の金額は一般的な太陽光発電システムの小売価格よりも安価で済む場合もあるため、導入直後に違約金を払って解約(=購入)する利用者もいます。