太陽光発電では「無料設置」が日本でも徐々に普及しつつありますが、蓄電池に関して無料設置サービスはあるのか。現状と将来的な見通しを解説します。

蓄電池の「無料設置」はまだ無い

太陽光発電では「無料設置」が続々増えています。東電系や中電系、関電系など大手電力会社の関連会社も続々とこの分野に参入しています。

ですが蓄電池に関しては、太陽光発電のような「無料設置」はまだ登場していません。

蓄電池の「無料設置」が成立しない理由

蓄電池の無料設置サービスがまだ登場していない理由として、以下の点を指摘できます。

蓄電池が高価

現在、蓄電池の価格はまだまだ高価です。単に初期費用が高いという話だけなら、太陽光発電も蓄電池以上の費用が掛かりますが、蓄電池は太陽光発電とは違った事情があります。

太陽光発電システムは、国内でもこの25年の間に10分の1以下と、大幅に値下がりしています(上表はエネルギー白書2020より作成) 現在の価格水準では、家庭用の電力料金と同等程度の発電が可能です。

一方、蓄電池はまだまだ新しい製品カテゴリということもあり、価格低減が十分ではありません。蓄電池を設置して元を取れる「ストレージパリティ」と呼ばれる水準は家庭向けで1kWhあたり5~6万円と言われていますが、現状の価格はその約4倍の20万円程度と言われています。

太陽光発電でも価格が低下していく中で徐々に無料設置が増えていったので、蓄電池に関しても同様のことが言えるでしょう。

設置しても「もとが取れない」段階なので、無料設置を提供することが難しいと言えます。

収益化の手段が限られている

蓄電池を無料設置で提供し、初期費用を回収した上で業者が利益を得る方法としてはVPP(仮想発電)のシステムに組み込むというものがあります。

VPPとは、蓄電池や太陽光発電をシステムで結合し、電力の需給に応じて制御することであたかも「発電所」で発電するように電力供給を安定化する取り組みです。

VPPの中で蓄電池は、電気が余っている段階で充電をし、需給が逼迫した時に放電をするような運転を行います。このような運転を行うことで、電力の価格差を利用して収益を得ることが出来ます。

ですがまだVPPは国内で実用化されたとは言い難い状況なので、蓄電池によって収益を得ることが現段階では難しいです。

寿命が短い

太陽光発電システムは、パワコンなどは10~15年ごとの交換が必要ですが、パネルは30年以上にわたり使い続けることが可能です。一方、蓄電池は15年程度で本体の電池自体が十分な性能を発揮出来なくなります。

太陽光発電の無料設置サービスでは、10~15年程度の契約期間終了後にシステムの所有権が無償で譲渡され、その後はユーザーが自由に活用できます。蓄電池で無料設置を実現しようとした場合、より短期間でコストを回収しなければ、性能が十分でない蓄電池が顧客に「押し付けられる」だけになってしまい、契約するメリットを提供できません。

初期費用0円のリースサービスは続々登場

本来の意味での「無料設置」とは異なりますが、初期費用が掛からず毎月一定額のリース料を支払うことで蓄電池を導入できるサービスが登場しています。以下で紹介します。

蓄電池エネカリ

東電系のTEPCOホームテックが提供しています。

初期費用が0円で、毎月1万円程度~のリース料を10年あるいは15年支払うことで蓄電池を導入できるサービスです。例えば税込み月10890円で10年契約(5.0kWh)では総額約130万円の支払いとなります。

購入した場合との価格比較を推奨

蓄電池はリースの他に、ローンで購入することも可能です。金利負担が発生しますが、手元の資金無しに導入できるので、リースとほぼ変わらないと言えます。税金の処理の関係はけっこう変わりますが、家庭向けの場合はその点を気にする必要が無い場合が多いでしょう。

現金で購入できる場合は、現金で買ってしまった方が10万20万の単位でおトクです。蓄電池は同じ製品でも購入する代理店によって価格に大きな差があるので、一括見積りサイトなどを活用して必ず価格をよく比較検討することをおすすめします。