年々下落を続けていく太陽光発電の余剰電力の売電価格。そんな時世の中、太陽光発電無料設置を導入するのは本当に得と言えるのか不安をおぼえる人も多いでしょう。数字を示しながら解説します。

下落を続ける売電価格

売電価格の推移

太陽光発電の売電価格は、発電システムの値下がりを理由として年々下がり続けています。上図は固定価格買取制度での家庭用太陽光発電の余剰電力の買取価格の推移です(2011年以前は余剰電力買い取り制度)

この10年の間に約半額と、急激に下落を続けているのが見てとれます。

固定価格買取終了後は更に安い

固定価格買取制度では、決まった期間のあいだ決まった金額で余剰電力の買い取りを行います。家庭用太陽光の場合、買い取り期間は10年。買い取りが始まってから10年間は同じ価格で売電することが出来ます。

固定価格買取制度での買い取りが終了した太陽光発電を「卒FIT」と呼びます。引き続き余剰電力を売電することは可能ですが、卒FIT太陽光の売電価格は8~10円/kWh程度が相場です。固定価格買取制度での売電価格と比べて半額、あるいは4分の1以下という単価です。

参考:卒FIT太陽光売電サービスの比較表

太陽光発電無料設置を導入するのは本当にお得か

売電価格が下落する中、無料とはいえ太陽光発電を導入するメリットはあるのか。詳しく解説します。

契約期間中のことは特に気にする必要なし

まず、無料設置の契約期間中については、ユーザー側で心配する必要はありません。

無料設置の事業者は現在の買取金額で採算が取れると判断した上で無料設置を行っています。また、現地調査を行って日照条件などを必ず調査するため、業者の採算が取れないと判断された場合は導入することが出来ません。

無料設置サービスは概ね10年、つまり固定価格買取制度の売電期間と同じ契約期間の長さです。その間、余剰電力を決まった金額で売電することで設置業者が収益を得る仕組みです。現在の固定価格買取制度の売電価格でも無料設置はビジネスモデルとして成立しているからこそ、参入企業が増えているわけです。

契約期間満了後に「負債」となるリスクは

では、無料設置の契約期間が満了した後はどうか。数字を交えながら解説します。

自宅で作れば電力の「送料」が掛からない

まず前提として、電力会社から電力を購入する際のコストとして「託送料金」というものが掛かります。このコストは電力会社(新電力会社を含む)が負担しているためユーザーからは見えづらいですが、どの電力会社と契約しても同じ託送料金が発生しています(新電力も大手電力も、同じ金額を負担している)

例えば東京電力エリアの場合、1kWhあたり9.43円(2020年)の託送料金が掛かります。一般家庭の電気料金は1kWhあたり26円程度を言われているので、支払った電気料金の約3分の1がこの託送料金となります。

託送料金は電力会社から電力を購入する際に必ず発生するコストです。一方、自宅で発電すればこの託送料金は発生しません。したがって、自宅でつくった電力は託送料金の負担が無い分、コスト面で有利です。

発電コストが高くなければ、電気は自宅で作った方が安い

電力会社は託送料金のほか、電力の調達コストも負担しています。卸電力取引所の取引価格は概ね平均で9円/kWh程度です。無料設置の太陽光発電は「発電コスト」も計算上ゼロなので、その点でも有利です。

もし発電コスト(太陽光発電の場合は設置費用+メンテナンス費用)が電力会社の料金単価26円/kWhを上回ると電力会社から電力を購入した方が安いことになりますが、メンテナンス費用しか掛からない無料設置太陽光では26円/kWhを上回ることは稀です。経産省資料では、2020年度の住宅用太陽光の平均発電コストは21円/kWhとされています。

収益シミュレーション

家庭用で平均的な4.4kW容量、年間発電量4400kWh、自家消費3割・売電7割という条件で試算します。契約期間中は支出なし、「収入」もほぼ無いため、契約期間10年を満了した後に限定して計算します。

収入の部

内訳金額(年)
買電量の減少(26円/kWh)34320 円
余剰電力の買電(9円/kWh)27720円
合計62040円

売電価格を9円と低く見積もった場合でも、年間6万円の経済的メリットを獲られる計算です。なお、電力会社から購入する電力には再エネ賦課金(1kWhあたり3.36円:2021年度)が上乗せされるため、電気料金を26円/kWhとすると実際には30円近い金額が発生します。自家消費では再エネ賦課金の負担はありません。

支出の部

  • パワーコンディショナーの交換 15年に1回 30万円前後
  • 定期点検 4年に1度推奨(経産省) 1回1~2万円
  • 発電システム撤去費用 15万円程度

確実に掛かる、掛けるべき費用はこの辺りです。

パネル自体の寿命は30年超と言われており、パワーコンディショナー(パワコン)の交換は必ず1回は発生する、しかも無料設置の契約期間終了から間もなく発生します。

無料設置の契約期間終了後20年使用するとした場合、合計の費用は30万円(パワコン)+10万円(定期点検5回)で40万円です。

また、パネルを含め発電システムの撤去には15万円程度の費用が掛かります。多くの場合、建物の解体とあわせて発電システムを撤去・解体することになるでしょう。

撤去費用まで含めると合計55万円掛かる、と見積もることが出来ます。

収支は

収入(電気料金の削減分含む)は20年で124万円。一方、撤去費用まで含めた最低ラインの支出は55万円なので、売電価格を9円/kWhと低く見積もっても収支が合います。

また、仮に余剰電力の売電価格を0円/kWhとしても電気代の削減だけで68万円なので、収支が合います。

今後、日本では太陽光発電の導入を更に大幅に増やすことを国策として目指しており、それに伴い昼間に電力が余りやすい傾向が強まる可能性が低くありません。売電価格は現在の「9円前後」の水準から上がることに期待は出来ませんが、とはいえ自家消費分だけでも十分収支が合うので、無料設置の太陽光発電は今後も長期的にメリットがあると言えます。

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太陽光発電無料設置の比較表