太陽光発電の「無料設置」は本当にお得なのか。数字を交えながら経済的メリット・デメリットを検討します。一般家庭で平均的な4.5kWを想定してシミュレーションします。
費用・収入の内訳
初期費用の比較
まずは初期費用を見てみましょう。
4.5kW容量の太陽光発電システムを導入する場合、購入して設置する場合は購入費用として100~150万円程度が発生します。「無料設置」の場合は当然費用はゼロ円です。
それに加え、購入費用をローンでまかなう場合は例えば住宅ローンの場合は「融資手数料」などの費用も発生します。住宅ローンの場合は借入金額の2%程度の費用が発生するため、例えば太陽光発電システムのために借入金が120万円増えると2.4万円の負担となります。
- 購入した場合→100~150万円程度
- 無料設置→0円
メンテナンス費用
無料設置の場合は、契約期間中は設置業者の責任でメンテナンスが行われるため基本的に「契約期間中は」費用負担は発生しません。
購入する場合に関しても、10年程度はメーカーなどの保証が付いているため、機器の不具合などは保証の範囲で対応してもらえることが多いです。
無料設置の契約期間に相当する当初10年間は、特にメンテナンス費用の負担に大きな差は無いと言えます。また、10年目以降はいずれも利用者に所有権が移り、所有者の責任においてメンテナンスをする必要があるため差は無いと言えます。
売電収入
大きな差が出る部分です。
無料設置の場合、契約期間中は余剰電力によって生じる売電収入は設置業者が持っていきます。利用者は契約期間中は売電収入を得ることが出来ません。
一方、購入した場合は売電収入を得ることが出来ます。2020年度に設置した太陽光発電システム(家庭用)から生まれる余剰電力は10年にわたり19円/kWhでの買い取りが義務付けられています。
4.5kW容量の発電システムの場合、地域によっても大きく差がありますが平均で年間4500kWh程度の発電が可能です。その内、余剰電力として売電されるのは平均7割程度とされているため、年間3150kWhが売電され約6万円の売電収入を得られます。10年間で60万円です。
- 購入した場合→10年で60万円
- 無料設置→10年間は0円
- 10年経過後は同じ
電気代の削減効果
太陽光発電を設置すると、通常は発電された電力は設置された建物で使用され、残りは余剰電力として売電されます。
購入して設置する太陽光発電システムの場合、自家消費分に電気代が掛かりません。電力会社から購入する電力量が減少するため、その分電気代が安くなります。
一方無料設置の場合、自家消費分にも電気料金が発生するものが多いため、自家消費による電気代削減メリットを得ることが出来ません。
4.5kW容量で年間4500kWhを発電し、3割(1350kWh)を自家消費した場合、電気代の削減効果は年間3.7万円です(買電を27円/kWhとした場合) 無料設置の場合、この削減メリットを得られません。10年で37万円の差となります。
- 購入した場合→10年で37万円の節約
- 無料設置→10年間は節約メリット無し
- 10年経過後は同じ
ローン金利
太陽光発電を導入するにあたって、住宅ローンを含むローンを利用する人は少なくありません。その場合、初期費用として発生する融資手数料(一番最初に紹介済み)のほかに月々の金利が発生します。
もちろん無料設置の場合、ローンを組む必要が無いため金利負担は発生しません。一方、購入費用100万円を35年・1%固定金利で借り入れた場合、支払い利息は合計で18万円にのぼります。
- 購入した場合→利息で18万円の負担(100万円/35年/固定1%)
- 無料設置→ゼロ
費用・収入を比較すると・・
費用・収入を一覧で整理すると
上で挙げた内訳を整理すると、以下のようになります(差が出る部分のみ計算)
内容 | 無料設置 | 購入 |
---|---|---|
初期費用 | 0円 | 110万円 |
売電収入(当初10年) | 0円 | -60万円 |
電気代削減(自家消費) | 0円 | -37万円 |
ローン金利 | 0円 | (18万円) |
差し引き | 0円 | 31万円 現金一括なら19万円 |
購入する場合と比べて、無料設置は19~31万円お得になる計算です。
なぜ無料設置の方が「お得」なのか
大まかな試算で、なぜ合計31万円(ローンを使わない場合は19万円)も「無料設置」の方がお得になったのか。
経産省の太陽光発電競争力強化研究会が2016年に報告した調査によると、家庭用の太陽光発電システムは同じメーカーの同じ商品でも、購入する代理店によって1.5倍の価格差があるとされています。
同じ調査では「多段階の流通構造により、流通コストが高くなっている」とも指摘されており、太陽光発電システムが代理店などのマージンが上乗せされることで値段が高くなっていることが窺えます。
それに対し無料設置モデルはパネルメーカー自身がサービスを提供している場合もあり、その場合は流通コストの影響を受けません。また、設置業者が利益を得るには設置費用を最低限に圧縮する必要があるため、購買力の大きさを活かしながら低価格でシステムを調達することでコスト低減を図っています。
無料設置を利用せず購入する場合も、必ず一括見積りサイトを利用して価格をよく比較することをおすすめします。
無料設置の方が「損」になるケースも
購入した方が「お得」になるケースもあります。
オール電化は要注意
無料設置を導入するにあたって、専用の電気料金プランを契約する必要があります。大手電力会社の標準メニューと比べて「安くなる」料金設定となっているものが多いため、年間数千円~1万円程度ですが電気代が安くなります。
ですが無料設置用の電気料金プランは「オール電化プラン」ではないものがほとんどです。オール電化住宅で契約すると、大手電力会社のオール電化プランと比較して電気代が高くなる場合が多いです。
特に大手電力会社の2016年以前のオール電化プランと比較すると、場合によっては年間数万円割高となります。仮に電気代が2万円高くなった場合、太陽光発電システムを現金一括で購入した方が安いことになります。
オール電化住宅にお住まいで、現金一括で購入できる場合は無料設置を利用するメリットは小さいか、購入した場合よりも「損」となる可能性があります。一括見積りサイトを利用して安価に設置できる業者を探すことをおすすめします。
オール電化住宅でもお得になる「無料設置」も登場
なお、最近はオール電化プランも選択できる無料設置サービスも登場しています。オール電化住宅で無料設置を利用する場合は、オール電化プランを選択できる業者を選んでください。